末期がん患者に退院を勧告するとき、「これ以上治療による軽快が見込めません」「残された時間を有意義に使ってほしい」という意味合いがあります。
最期の時間が限られている家族、愛する人に何ができるのか、一緒に考えていきませんか。
今回は、末期がん患者の退院の意味、緩和ケア(クオリティ・オブ・ライフ)について書いていきます。
末期がん患者の退院の意味
結論から言うと、「治療成績は見込めません、限られた余命を家族との思い出作りに使いましょう」という提案です。
近年、がんを治すための治療を受けても治らない場合、がんを取り除ききれなくても「これ以上の治療は難しいので退院してご家族と過ごしてください」と退院を勧められることが増えてきました。
以前は1日でも長く、延命するための医療措置が重要視されていましたが、時代は変化し、残された日々、時間の質を高め、患者さんと家族にとって有意義で幸せと感じる時間を過ごしてもらうこと、「クオリティ・オブ・ライフ」の考えが広まっていきました。
苦痛を伴う治療を通しての延命=必ずしも幸せとは限らないという今の世論を反映した選択といえるでしょう。
退院後の緩和ケア
退院したがん患者に家族ができることはいくつかあります。
- 患者さんが望むことを可能な範囲で実行していく。
- 痛みのコントロール。
- 会わせておきたい人に連絡をとる。
ご家族には精神的にも、体力的にも、経済的にも、かなり負担がかかることが多くなります。
しかし、一緒にすごせる時間はもう限られています。
余命的に時間があったとしても、いつ急変が起こるかわかりません。
悔いが残らないようにできることをしてあげてほしいと思います。
患者さんが望むことを可能な範囲で実行していく。
末期がんといっても、余命3ヶ月以上の患者さんは元気な人と同じくらい色々とできたりします。
担当医と相談しながら、行きたい場所や食べたいものなど、患者さんが望むことをできる範囲でかなえてあげてほしいと思います。
患者さんが何をしたいのか、どこに行きたいのか、がんや余命を告知していない場合は尋ねるのが難しい箇所もあると思いますが、うまく工夫して希望を聞きだしてみましょう。
痛みのコントロール。
病院から処方された鎮痛薬を使ってがんによる痛みをコントロールすることを、「疼痛コントロール(もしくはペインコントロール)」と言います。
日々の生活の質を向上させるためには、痛みが緩和されていることが一番です。
在宅で痛みがでてきたときはすぐに痛み止めを服用してもらうようにしましょう。我慢はしてはいけません。
痛みが緩和される姿勢や代替療法(幹部を温湿布すると痛みがひく等)もありますので、患者さんの痛みが和らぐ状況をメモしてケアに役立てましょう。
会わせておきたい人に連絡をとる。
患者さんの親しい友人や親族など、会わせておきたい人、会ってほしい人に連絡をとり、意識がしっかりしているうちに会ってもらうと良いでしょう。
大腸がんで亡くなった私の妻は、趣味の宝塚ファンの友人、親族、習い事の恩師に会いたいと言っていました。
幸い、全員と連絡がとれ会わせることができました。
そのときの写真の笑顔は本当に素敵でした。
会った人たちは口々に「連絡してくれてありがとう」「知らずに会えないままだったら後悔するところでした」と感謝してくださいました。
さいごに
末期がん患者に退院を勧告する意味を書いていきました。
中には「もう治療してもらえない、見捨てられた」と感じる人も多いと思います。
しかしながら、苦しく大変な治療の先に延命が見込めないのであれば、残された時間をどう生きるかということに目を向けることも必要になります。
それは家族にとって受け入れがたいことであり、どうにかして治療できる方法がないか模索するでしょう。私もそうでした。
残された日々をどう幸せに生きてもらうか、そのために何ができるかを受け入れ、考えることは本当に辛いことです。
それぞれの思い、家族のかたちがあり、治療を選ぶか、残された日々を楽しく過ごすことを選ぶか、どちらも答えなのだと思います。
どちらの答えを選択しても悔いのないよう、経験者として、お祈りしています。
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