末期癌の患者さんは病状が進行するにつれて、行動や発言、会話に変化が生じてくることがあります。
怒りっぽくなったり、暴言が増えたりして、介護している家族も非常に苦しむことになるでしょう。
今回はそういった末期癌の患者さんの感情の変化について、理解して欲しいことを体験談を通じて書き残していきます。
がん患者さんが怒りっぽくなったときに考えられる原因
末期がん患者さんが、急につじつまがあわないことを言い出した、怒りっぽくなった、暴言が増えてきたというとき、考えられる病状として、「せん妄」というものがあります。
せん妄とは、意識障害が起こり、発言や行動が急に変化する、末期がん特有の症状です。
暴言を言われたとき、周囲の人や家族はとてもショックを受けてしまうでしょう。
しかしこれは、末期がんの患者さんに起こる症状のひとつなのです。
患者さんの本心では決してありません。
せん妄について理解し、何ができるかを家族と医療スタッフで考えていきましょう。
せん妄が起きた患者さんに対して、家族ができること
せん妄が起きた患者さんに対して、家族ができることはいくつかあります。
せん妄による二次被害が生じないように、患者さんのせん妄の症状を見極め、必要に応じてひとつひとつ対処しておきましょう。
せん妄になると、異常な行動や発言、暴言に心を痛めるご家族も多いと思います。
せん妄時の患者さんの言葉はちぐはぐなものが多くなりますが、否定をしないようにしましょう。
「うんうん、そうだね」「わかるよ」「辛いね。もう大丈夫だからね」と相槌を交えて同調の意思を示してあげると、患者さんは安心します。
せん妄が長時間続くことで、患者さん自身の体力の消耗が心配になってきたときや、周囲のものを投げたりするなど危険な行動が出てきた場合は、主治医とよく相談して、必要に応じて安定剤や睡眠薬で眠ってもらうことも大切です。

末期大腸がんの妻のせん妄経験-管理人体験談-
妻のせん妄は亡くなる2日前に始まりました。
小児がんで亡くなった娘がそばにいる、元気してた?ママは会いたかったよ~というような発言や、娘がそこにいるかのような会話が多くありました。
幸い、大声で叫んだり、暴言といったことはありませんでした。
しかしながら、亡くなった娘と会話をしているかのような姿は「せん妄だろう」と主治医や周囲が思っていても、それをいさめることは難しい空気がありました。
心のどこかで「本当に娘がそばにやってきて妻と会話してくれている」と思いたかったからかもしれません。
その後、がんによる強い痛みを訴えるようになり、「眠らせて」と自ら鎮静を訴えました。
最後は安らかに、眠ることが多くなり、そのまま息を引き取りました。
さいごに
患者さんが突然意味不明なことを言ったり、怒りっぽくなった、暴言を吐くようになったことは、看病している家族にとって、とてもショックなことです。
人が変わったんじゃないか、抗がん剤の副作用で人格が変わったのではと心配することもあるでしょう。
しかしこれは「せん妄」という意識が混乱した状態、病気なのです。
患者さんの本意ではありません。優しく穏やかに接してあげてください。
声が大きい、騒ぐことが増えてしまったなど、周囲への配慮や、患者さん本人の体力の消耗が心配なときは、主治医と相談のうえ、眠らせてあげる時間を延ばしましょう。
患者さんが穏やかに最期のときを迎えるために出来る限りのことをしてあげてほしいと思います。
コメント