告知をうけたがん患者さんの動揺、不安、焦りは当事者しかわからないことです。
どんなに親身になっても、察しきれない心理は必ずあります。
告知を受けた多くのがん患者さんがたどる心理推移と、家族にできることを書いていきます。
告知を受けたがん患者の心理
がんであると告知を受けた人は、その日から「自分はがん患者である」事実を受け入れなければなりません。
どのように受け入れ、前を向いていくかは人それぞれです。
段階別に心理の推移を書いていきます。
- 1:驚き、衝撃。
- 2:不安定、荒れ。
- 3:落ち着き、慣れ、適応。
大きく分けてこの段階を推移していきます。
推移していく速度や流れは人それぞれで、必ず3段階まで推移するとは限りません。
それぞれの時期がどれくらい長いのか、すぐ終わるのかも人それぞれです。
主な心理の推移は以下のとおりです。
驚き、衝撃。
がんという病名を告知されると、大半の人は「まさか自分が」「何かの間違いだ」と思い動揺するでしょう。
がんという自分には無縁だと思っていたものが、一気に身近になったことへの現実感のなさに実感が伴わないこともあります。
体調が悪く、何らかの自覚症状が有った人であれば「やっぱり」と思う場合もあります。
告知により、自分ががんである、がん患者であるという事実を知った驚き、衝撃が起こります。
不安定、荒れ。
告知後、心の動揺が1~2週間続きます。
不安になったり、落ち込んだりを繰り返します。
「どうして自分が」という、現実を受け入れきれない人は周囲に当たりだしたり、急にふさぎ込んだりするようになります。
人によっては、残された時間を有意義に使おうと考え、治療方法を模索したり、積極的に行動を起こしたりする人もいます。
落ち着き、慣れ、適応
不安定や荒れ段階も時間の経過とともに少しずつ落ち着いてきます。
がんと戦っていこうという気持ちや、痛みや治療をコントロールして、有意義に過ごそうとする気持ちになります(がんとの共存)。
この段階になると、周りの人たちの支えや協力をかみ締めて感謝するようになり、前向きに過ごそうという気持ちになっていきます。
適応障害
不安定な状態が治まらず、適応することができない状態になると、「適応障害」と判断される場合があります。
うつ状態になったり、自暴自棄になったりと前向きな姿勢がみられない状態です。
状態、症状により適切な治療を受けることになります。
適応障害は全体の20%ほどといわれており、決して少なくありません。
告知を受けたがん患者に家族ができること
患者さんと同じように、家族も告知により大きな衝撃を受けます。
これからの治療やケア、経済的なことなど、多くの不安が生じます。
しかし一番は、家族である患者さんへの対応です。
- 普段と変わらず接する。
- 「がんばれ」と励まし過ぎないようにする。
- 患者さんの気持ちを尊重し理解する。
がんになってしまっても、家族であることはなんら変わりありません。
必要以上に特別扱いをせず、普段どおりに接し、沢山会話をして気持ちを共有することが何より大切です。
話を通して患者さんの心や気持ちが汲み取れる場面があるはずです。
普段と変わらず接する
がんであることで、特別扱いや腫れ物に触るような扱いをすることは、患者さんはより不安にかられます。
家族なのに自分だけ違う扱いを受けることは孤立感を深める原因です。
がん患者である前に、家族、大切な人であることを忘れないで下さい。
できる限りいままでと変わらない生活、話題をしていくことが何より大切です。
「がんばれ」と励まし過ぎないようにする。
患者さんにとって、周囲の励ましというのは時に苦痛に感じられることがあります。
辛い治療、闘病生活をがんばっているのに、もっとがんばらないといけないの?と思うことがあるからです。
患者さんは今も「がんばり続けている」のです。
そこを理解した上で「がんばっているよね」「大変だよね」と、今のがんばりに理解と同意、いたわりの言葉をかけてあげることがプレッシャーを感じず安らげる言葉となります。
また「何か欲しいものがあったら持っていくよ」「できる事があれば遠慮なく言ってね」といった支援の言葉のほうが、後に嬉しかったと末期がんで逝去した私の妻は語っていました。
患者さんの気持ちを尊重し理解する。
患者さんの話をきくときに、相槌をうちながら聴くように心がけましょう。
相手の話に対して自分の考えや、価値観を差し込まず、許容するようにするようにしましょう。
「こうしたらよい」「こうするべきだ」という助言や、自分自身の見方で患者の考えと反対の意見は控えて、まず患者さんの思いを認めることが大切です。
また、患者さんの話をさらによく理解するために、話をただ聞くだけでなく、時には適切な質問を投げかけることも必要です。
患者の話の流れを邪魔しないように「それはどんな感じですか?」「もう少し詳しく話して下さい」というように、患者さん自身が整理して話しやすいような質問を投げかけましょう。
そうすることで、より深いコミュニケーションが図れ、患者さん自身も気づかなかった感情や思いを至らせることができることもあります。
まとめ
末期がんで亡くなった妻に励ますつもりで「がんばれ」と声をかけ続け、ある日「私はもっとがんばらないといけないの?もうがんばれない!つらい!」と泣かれたことがあります。
私としては「応援しているよ」「ずっとそばにいるよ」という意味合いをこめた言葉でしたが、妻にとっては「まだ頑張りがたりない」と捉えるつらい言葉でした。
妻がはっきり言ってくれたから気づけましたが、本心を言わずに我慢している患者さんも多くいると思います。
本人にプレッシャーになりかねない言葉を避け、フォロー、支援する言葉をさりげなく届けることが、患者さんの支えになると考えます。
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